Summary
イサツキシマブはCD38レセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体です。多発性骨髄腫に対して抗腫瘍効果があるとされています。過去のフェーズ1b試験では、イサツキシマブ+ポマリドミド+低用量デキサメタゾン療法を施行した再発難治の多発性骨髄腫患者の65%でORを達成しました。この試験では、イサツキシマブ+ポマリドミド+低用量デキサメタゾン療法をポマリドミド+低用量デキサメタゾン療法と比較し、再発難治多発性骨髄腫患者におけるPFSをしらべた。
オープンラベルのフェーズ3の多施設・ランダム化比較試験で、ヨーロッパ・北アメリカ・アジアの地域24か国102施設で研究を行った。再発難治の多発性骨髄腫患者で、少なくとも過去に2ラインの治療を施行しており、レナリドミドとプロテアソーム阻害剤を含む治療をしたものを参加とした。過去に抗CD38抗体の治療にたいして難治性だった患者は除外された。イサツキシマブ10㎎/kg+ポマリドミド4㎎+デキサメタゾン40㎎(75歳以上では20㎎)の群と、ポマリドミド4㎎+デキサメタゾン40㎎の群に1:1にランダムに割り付けた。
イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン群では、イサツキシマブをday1、day8、day15、day22に最初の28日サイクルで投与し、以降はday1、day15に投与とした。両群ともにポマリドミドは4㎎をday1-21で内服し、デキサメタゾンは経口または静脈注射でday1、day8、day15、day22でそれぞれのサイクルで投与した。治療は腫瘍の進行や副作用による治療継続困難になった場合や、同意の上での治療中断を行うまで継続した。副作用による減量はポマリドミドとデキサメタゾンに関しては行ったが、イサツキシマブは行わなかった。プライマリーエンドポイントはPFSで、安全性に関しては少なくとも同薬剤を1回以上受けた患者全員を対象に行った。
2017年1月10日~2018年2月2日までに307人の患者に対して治療を施行した。154人がイサツキシマブ含むレジメンで、153人が比較群であった。フォローアップ中央期間は11.6カ月で、PFS中央値はイサツキシマブ群で11.5カ月、比較群で6.5カ月であった。治療関連有害事象で最も多かったものは上気道炎と下痢であった。致命的な有害事象はイサツキシマブ群で12例(8%)、比較群で14例(9%)にみられた。治療関連死亡はイサツキシマブ群で1例(敗血症)、比較群で2例(肺炎と尿路感染症)であった。
イサツキシマブをポマリドミド+デキサメタゾンに加える治療は、再発難治の多発性骨髄腫患者においてPFSを向上させる結果であった。イサツキシマブはレナリドミドやプロテアソーム阻害薬で再発難治となった多発性骨髄腫患者において新しい治療オプションとして重要な薬剤である。
イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン vs ポマリドミド+デキサメタゾン