キャッスルマン病の概要(Overview of Castleman disease)

概要

キャッスルマン病について。臨床、治療、病理。POEMS症候群やTAFRO症候群についても。

キャッスルマン病の歴史

キャッスルマン病はその特徴から4つの疾患群に分けられる。

1950年代にベンジャミン・キャッスルマンが、縦隔リンパ節腫大をキャッスルマン病と記載したのがはじまり。

1980年代にはキャッスルマン病は単中心性のキャッスルマン病(uncentric castleman disease/UCD)と多中心性キャッスルマン病(malticentric castleman disease/MCD)と分類された。MCDはHIVと関連することがわかった。

1980年にはPOEMS症候群(多神経炎、臓器障害、内分泌異常、モノクローナルな形質細胞の障害を示す症候群)とMCDがオーバーラップしていることがわかり、この場合形質細胞がMCDの原因になっていることがわかった。

1990年代にはHIV+のMCDすべての例でヒトヘルペスウイルス8(HHV8)が原因となっていることがわかった。

2010年にはHHV8マイナスの例または特発性のMCD(iMCD)でTAFRO症候群があることがわかった。

…というわけで最近MCDをHHV8-MCDPOEMS-MCDiMCDにわけ、iMCDはさらにiMCD-TAFROiMCD-NOSで分類している。

UCDとMCDにまず分けて、HHV8陽性ならHHV8-MCD、陰性ならPOEMSとTAFROとiMCDに分類する感じ??

疫学

  • MCDの場合は男のほうが少し多い。
  • UCDはMCDより若いヒトが多いが、全年齢でみられる。
  • リスクファクターは不明だが、HHV8-MCDは免疫不全がリスクである(なのでHIV陽性者がなりやすい)

病態

  • UCDは濾胞樹状細胞の新生物みたいな感じ
  • HHV8は、ナイーブB細胞を胚中心を経ないで形質細胞に分化させることができる…!?かも。
  • iMCDについては感染症説とか自己免疫説もあって詳しいことはわかってないが、悪性腫瘍説もある。悪性腫瘍合併のリスクが上がることと、Hodikinリンパ腫や骨髄線維症と臨床病理がかぶるためそういわれている。
  • モノクローナルな形質細胞がPOEMS-MCDの原因となっている可能性があり、過剰なVEGFやIL-12が病状にかかわっているかも…?

病理組織

病理画像

AとBがヒアライン血管型、CとDが形質細胞型の画像。両者が混ざった混合型もある。

ヒアライン血管型

UCDでよくある。マントルゾーンが広い玉ねぎの皮様(onion skin pattern)、胚中心にヒアレインが沈着する(lolipop lesions)。

形質細胞型

inter follicular zoneに形質細胞のシートがある。

臨床所見と診断

  • PET-CTのSUV-maxは3~8が一般的、それより高い場合はリンパ腫を疑う。
  • ひとつのリンパ節腫大はUCD、二つ以上の腫大はMCDとして鑑別をすすめる。

UCD

ひとつのリンパ節腫大があり、病理診断で確定。

縦隔や頸部のリンパ節腫脹がおおいが、どこにでもできる。

MCD

一つ以上のリンパ節腫大があり病態もいろいろ。

HHV8とHIVは調べる(HHV8-MCDとiMCDの鑑別のため)

POEMS症候群がないか調べる。

HHV8-MCD

4分の3の患者で血行動態の問題か神経学的な問題のため集中治療を要した。

HIV陽性と陰性のHHV8-MCDでは若干違いがあり、HIV陽性例は陰性例に比べて年齢が若く、血球貪食症候群が起きやすい傾向にある。

iMCD

HHV8-MCDと似ているがHHV8は陰性である。

関節炎、ループス様症状などもおおい。

iMCDはiMCD-NOSとiMCD-TAFROに分ける必要がある。

iMCD-TAFRO

TAFROを示すiMCD。

iMCD-NOSが高血小板血症、高ガンマグロブリン血症を示すのに対してiMCD-TAFROは血小板減少または正常であり、カンマグロブリン上昇も軽度である。

線溶系検査と骨髄生検は施行するべき。

iMCD-NOS

iMCD-TAFROと比べて less aggressiveである。

POEMS-MCD

HHV8マイナスのMCDとPOEMS症候群が同時に診断されることがあるが、POEMS症候群の原因となる形質細胞がMCDを起こしているという考え方。

骨硬化性骨髄腫と関連していることが多い。

骨硬化性病変のないPOEM-MCD患者は骨病変のある患者よりもより病状が悪化しやすいといわれる。

HHV8陰性のMCDを診断するときは、骨病変がないか、M蛋白がないか、ほか内分泌検査や骨髄生検が必要である。

鑑別

  • UCD➡病理組織で診断
  • HHV8-MCD➡HHV8を調べる
  • POEMS-MCD➡M蛋白を調べる
  • iMCD-NOS➡リンパ増殖症候群(ALPS)、IgG4関連疾患など
  • iMCD-TAFRO➡骨髄線維症、SLE、急性HIV

二次がんについて

二次がんはリンパ腫が多い

リツキシマブをベースとした治療(後述)が導入されてからは発生率は減っているらしい。

治療

UCD

外科手術。で、検査値もどることが多い。

だめなら放射線や塞栓療法、リツキシマブやシルツキシマブを用いたネオアジュバント療法を検討する。

MCD

サブタイプがいろいろあるため混在している。予後もサブタイプによってちがう。

HHV8-MCD

CD20を発現しないが、リツキシマブが効く。95%がCR。

リスキシマブ使用で合併していたカポジ肉腫が悪化することがある。

POEMS-MCD

自己幹細胞移植+high dose ケモ

だめなら、多発性骨髄腫のほかの治療を行う。

骨病変がない場合やIL-6が高いときはシルツキシマブ/リツキシマブを考慮する。

iMCD

iMCDではまず抗IL-6抗体を投与する(シルツキシマブ)

日本ではトシリズマブに相当する。

効かないときは…軽症例ではいろいろ試されていて、なかでもリツキシマブは効きそうな感じ。第Ⅱ相試験ではサリドマイド+シクロホスファミド+PSLなど施行している。

重症例(iMCD-TAFROを含む)では最初に抗IL-6抗体とHDステロイドを投与する(mPSL500mg/day)。

それに加えてリンパ腫や骨髄腫などに対して使われるレジメンをICUにいるときから使ってサイトカインの嵐を止めるのが重要。奏効率は75%程度あるものの一般には再発する。

iMCD-TAFROは比較的新しいサブタイプなので詳しい治療法などはまだよくわかっていない。